レポート

 

◆大学教育のDXについて
 DX<Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)>は進化したITを普及させることで人々の生活をより良いものにしていく変革のこととして,2004年にスウェーデンの大学教授によって提唱された概念である。経済産業省は2018年に「DXレポート」「DX推進ガイドライン」を公表しており,その中でDXを次のように定義している。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し,データとデジタル技術を活用して,顧客や社会のニーズをもとに,製品やサービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや,組織,プロセス,企業文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立すること。」
 すでに,経済産業省だけでなく産業にかかわる分野ではICTを多次元,複合的な環境の中で最大限に活用することとして認知されている。

 DXについては当初は実施対象が主として企業であったが、今や政府、中央官庁、地方自治体、公益機関、教育機関等々あらゆる分野、組織に及ぶがその本質は各組織においていわゆる情報環境の最適化に向けて常に推進しつづけることである。
 ここで現状の中で教育におけるDXとはいかにあるべきか。前術の定義の中で「顧客や社会のニーズをもとに・・」ということは当然,具体的にどこにニーズがあるかが重要であり,
すなわち問題を定義し,解決目的を的確に定義する必要がありこれはいわゆるICT化と同一の方法論であり、すなわち新しい教育環境の要求定義が重要となる。

広く教育環境を支える情報環境としてもDXを意識することは、教育環境の質的向上に関する問題意識強化をする意味で様々な取り組みが望まれる。ここで実施されている事例を知ることは取り組まれている組織や関係者にとって検討するうえで参考になろう。
以下に大学の情報環境の改善としてWEB上で理解できる情報を数例掲げる。

大学がDXを推進するメリットや実際の導入事例を解説
スパイラル株式会社
https://www.pi-pe.co.jp/solution/article/education/547/

recruit進学総研
大学を強くする「大学経営改革」[93] DX(デジタルトランスフォーメーション)が大学に問いかけるもの 吉武博通
https://souken.shingakunet.com/higher/2021/07/93dx-272b.html

大学に求められるDXとは?
KDDI Message Cast
https://sms.supership.jp/blog/dx/daigaku-dx/

大学DX化取り組み実態調査レポート|近畿大学のデジタル化事例紹介【2023年版】
RESERVA.ac
https://ac.reserva.be/uni-dxresearch-kinki/

◆デジタルアーカイブズについて
 大学におけるDXに関しての情報をとりあげてきたが、DXの広範囲な社会的な適用については、いわゆる産業界、学校教育以外の社会教育、生涯学習の面での具体的かつ効果的な方法論として、
特に代表的な事例の一つとしてデジタルアーカイブがあげられよう。現状では多くの課題も存在するが、これは遠隔授業を含む教育活動を支援する新しい流れである。

なお、デジタルアーカイブとは
•「デジタル形式で」「記録する・保存する」/「記録されたもの・保存されたもの」
•「様々なデジタル情報資源を収集・保存・提供する仕組みの全体」のことであり、当然教育機関や地方自治体でも優れた方法として受け入れられように多様な文化資源をデジタル化・公開するためのクラウド型プラットフォームシステムとなっている。
 現在はデジタルミュージアムとして呼ばれるコンセプトもこの枠組みの上に位置づけられる。

 ここでトロンを発想し、実現した坂村健氏は20年前よりデジタルミュージアム-21世紀型分散博物館構想-として以下を提案している。先を見通した本質的で貴重な提案であり、現在はこの方向で世の中が動いていると言える。

http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DPastExh/Publish_db/2000dm2k/japanese/01/01-01.html

 このコンセプトを実現している典型的な例は、ADEAC( ア デ ア ック:A System of Digitalization and Exhibition for Archive Collections)で、地域の文化資源をデジタル化し公開するためのシステムである。その原点は 2010 年度から 3 年間、東京大学史料 編纂所社会連携研究部門において、石川徹也教授(当時, 現 TRC-ADEAC 株式会社会長)が主宰し,大日本印刷株式会社、丸善株式会社,株式会社雄松堂書店,株式会社図書館流通センター等の企業が参加した産学連携研究の成果である。
 このシステムの具体的な目的は、自治体史(県史・市史等に関して横断的フルテキスト検索と引用史資料の高精細画像閲覧を可能とすることにあった。このため,通常のメタデータの検索だけではなく、当初から史資料本文のフルテキスト検索が実装されていたところに最大の特徴がある。
https://adeac.jp/

現在は、凸版印刷等システム支援、構築を担う企業のサービスにより各地方自治体や大学等でも以下のデジタルミュージアムが実現し運用されている。
主な事例を以下に紹介する。

世田谷デジタルミュージアム
https://setagayadigitalmuseum.jp/

町田デジタルミュージアム
https://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/bunkazai/
machidadezitarumyuziamu.html
     千葉の県立博物館 デジタルミュージアム
     http://www.chiba-muse.or.jp/DM/index.php
松戸市デジタルミュージアム
     https://matsudo-digital-museum.jp/
おだわらデジタルミュージアム
     https://odawara-digital-museum.jp/selection/nakazato/
北海道デジタルミュージアム
     https://hokkaido-digital-museum.jp/
広島大学デジタルミュージアム
     https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/
デジタルミュージアム    http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1997DM/chapter1/0101.html
以上のように様々なところで試行錯誤が行われていますが今後も引き続き動向と課題について紹介いたします。